楽観ロックのつぶやき

皆さんのおそばに一言添えたい。

(読了)ババヤガの夜

注意!ネタバレを含みます。

 

 王谷晶(おうたにあきら)作。

 日本人作家として史上始めてイギリスの「ダガー賞」を受賞ということで、かなり話題になった本作、大藪春彦賞もとっています。話題ということで、図書館でも予約待ちの人数も結構な数になっているようです。
 手に取ってみると、意外と薄くてびっくり。202ページです。こんな作品をあっという間に読み終わるのはもったいなく思います。

 さて内容ですが、子どもの頃から祖父にスパルタ教育で喧嘩を叩き込まれ、そのせいか、本能か、持って生まれた資質なのか、暴力に飢えた女子(進藤依子)が主人公です。謎の祖母が鬼婆のようで、それがババヤガと繋がってるみたいですね。そして依子もいずれババヤガになっていく、そんな感じでしょうか。

 ヤクザの内部にかなり切り込んだ物語になっており、当初からどす黒い血の色や、血の匂いをプンプンさせています。ヤクザの世界は、徹底的な男社会であり、作中で語られる女性に向けた卑しい、蔑んだ単語もひどいものですが、そんな中で喧嘩に関しては引けを取らない依子が運命?に翻弄されていくさまが描かれています。

 やくざの組長の娘、尚子との出会いが鮮烈で、また尚子の内面が謎で興味深く感じます。すこしずつ打ち解けるようで打ち解けず、でも距離感は間違いなく近づいていくのは面白く思うし、この二人の運命がどう交錯していくのか展開も楽しみになります。

 ここからがほぼネタバレなのですが、尚子の初登場シーンで、尚子は「尚子」とだけ記載されています。「しょうこ」なのか、「なおこ」なのか読者に委ねられます。そして、組長の妻を寝取って逃げた男「マサ」と組長の元妻の逃避行が、いつの間にか依子と尚子の逃避行に重ね合わせられていく様子が難解でした。
 尚子は偽名を使うために「正」と名乗るのですが、この読み方も紹介されない。「マサ」と重なるわけです。ネタバラシのときに「尚子」は「しょうこ」であり、逃避行において、ヘタを踏まないように似た名前である「正」は「しょう」と読ませていたことが始めてふりがなをつけた記載で明らかになるわけです。おいおい「正」は「ただし」なくて、「マサ」でもなくて、「しょう」って、尚子だったのかよ!!って。え?ちょっと待って、じゃぁあそこの「マサ」と組長の元妻の逃避行だと思っていたのは、依子と尚子のことだったの?え?時系列?え?え?
 みたいな感じですね。

 これ、漢字の読み方が何通りかがある日本語ならではのギミック何だと思うのですが、ダガー賞の翻訳部門を受賞って、どんな風に翻訳されたのでしょうか。興味深いです。かといって、翻訳されたものを呼んでも、英語はちんぷんかんぷんですな。。。
 アウトレイジ以上の暴力、バイオレンス要素に、LGBTQ、女性同士の関係性など、いくつもの要素が見事に融合した、素晴らしい作品でした。