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「PMが壊してるパターン」 | 組織の病理

 

「PMが壊してるパターン」 | 組織の病理

1. はじめに

プロジェクトの成功を左右する存在であるプロジェクトマネージャー(PM)。現場を牽引し、納期や品質を守るために日々奮闘しているPMですが、そのマネジメントのあり方によっては、気づかないうちに現場のエンジニアを疲弊させ、組織を「壊して」しまうパターンがあります。

熱心に管理しているつもりでも、現場が静かに崩壊していくという現象は、実は多くの職場で起きている構造的な問題です。今回は、特定の個人を責めるのではなく、なぜそうしたすれ違いが起きてしまうのか、私が数々の現場で見てきたリーダーたちの姿をもとに、組織の病理とあるべきコミュニケーションについて考えていきたいと思います。

2. 背景・問題提起

PMの国際的なガイドラインであるPMBOKでは、「プロジェクトマネージャーは、その仕事時間の9割をコミュニケーションに費やす」とされています。しかし、これほど多くの時間を費やしているにもかかわらず、なぜ現場が壊れてしまう事態が起きるのでしょうか。

私自身、長年IT現場に関わってきましたが、「マネジメントの勘違い」が組織を追い詰めている光景を何度も目にしてきました。
例えば、毎週の進捗会議です。進捗の遅れや品質問題が発生した際、報告したメンバーを吊るし上げ、「しっかり、ちゃんとやってください」といった、曖昧で抽象的な精神論をぶつける。これは「対話」ではなく、単なる「プレッシャーの伝達」です。

起きてしまったトラブルの責任を個人に押し付け、具体策のないまま責め立てる。こうした「質の低いマネジメントごっこ」に時間が費やされる環境では、現場は萎縮し、「不都合な真実」を隠すための「綺麗な報告書」作りにさらに時間が奪われるという、負の連鎖が生まれてしまうのです。

3. 組織を壊すパターンとリスクを見つけるアプローチ

現場を壊してしまうマネジメントの構造と、それを防ぐために必要なアプローチを整理してみます。

  • 個人を標的にした「過去追及型のなぜなぜ分析」
    トラブルの際、「これからどうするか」という未来の会話ではなく、「なぜ防げなかったのか」という過去の追及と叱責に終始するケースです。度が過ぎた「なぜなぜ分析」や、プロセスを無視した的外れな分析は、メンバーの心理的安全性を根底から破壊します。 本来、再発防止のために仕組みを問うべき分析が、個人を追い詰める武器になっているケースです。「なぜ気づかなかったのか」「なぜ確認しなかったのか」と、個人の注意不足や能力不足を執拗に責める問いは、メンバーの防衛本能を引き出す「問いかけの罠」となります。これでは、トラブルを恐れて隠し事をする文化を助長するだけです。
  • 報告ラインだけに頼るコミュニケーションの罠
    PMBOKが説く「9割のコミュニケーション」を、デスクの上での報告書確認や定例会議だけで完結させてはいけません。リーダーから上がってくる「加工された現実」である報告書だけで現場を判断しようとすると、不都合な情報を見落とします。これを防ぐためには、プロジェクトルームの内外で、実際の担当者と日常的に言葉を交わす「多角的な接点」が不可欠です。担当者と直接話す中で、リーダーが上に正しく報告していない現状を察知する。一見、越権行為に見えるかもしれませんが、この「現場のリアルな体温」を感じ取ることこそが、真のリスクマネジメントにつながります。
    IT現場、特にテレワーク環境では、メンバーが画面に向かって静かに座っている裏で、どれほどヒーヒー言いながらトラブルと格闘しているかという「現物(現実)」が見えにくいものです。このプロセスを想像せず、表面上の数字や結果だけで「余裕があるはずだ」「もっと意識を高く」と判断してしまうのは、現場の体温を無視した的外れな分析と言わざるを得ません。
  • 現場の「体温」を察知する観察力
    製造業の工場とは異なり、IT現場、特にテレワーク環境では「不良品の山」のような現物が見えません。特にテレワーク環境では、トラブルという「現物」が画面の中に隠れて見えません。
    ここに「結果(数字)だけを見る管理」が組み合わさると、深刻な矛盾が生じます。トラブルを未然に防ぐために、自身のスキルや時間を削って奔走した人の「水面下の努力」は評価されず、むしろ「何も起きていない=余裕がある」と見なされる。一方で、一度トラブルが起きれば、そのプロセスは無視して「なぜ防げなかったのか」と追及される。この「頑張るほど見えなくなり、起きた時だけ責められる」という構造的矛盾こそが、現場の主体性を奪い、組織を静かに壊していく真犯人なのです。

4. 本質的な論点・解決の方向性

プロジェクト運営において最も大切なスタンスは、「バグを憎んで、人を憎まず」という姿勢ではないでしょうか。

システム開発にトラブルはつきものです。責めるべきは発生した問題(バグ)やそれを生んだ仕組みであり、懸命に向き合っている担当者(人)ではないはずです。
また、本当に現場を支えられるPMは、深刻なトラブル報告に対しても、まず「何が起きても動じない」という姿をメンバーに見せることができます。 重大なバグが発生したり、ステークホルダーから厳しい追求を受けたりしたとき、PM自身がおどおどし、バタバタと狼狽してしまったらどうなるでしょうか。その不安は一瞬にしてメンバーへ伝播し、現場はさらなるパニックと疲弊に陥ってしまいます。 PMがドッシリと構え、「起きたことはしょうがない。これからどうしていくかを一緒に考えよう」と寄り添う姿勢を見せることで、現場には「このPMなら、どんな悪い報告をしても一緒に解決に向かってくれる」という絶対的な安心感が生まれます。この安心感こそが、隠し事のない「正しい報告」をリアルタイムに引き出し、結果としてプロジェクトを最短距離での解決へ導く鍵になるのだと思います。

5. おわりに

PMが費やす「9割のコミュニケーション」は、管理のためではなく、現場と「共に立つ」ために使われるべきものです。

失敗を責められる恐怖をなくし、問題解決のパートナーとして現場に寄り添うことで、チームは本当の強さを発揮できるようになります。人を憎まず、仕組みと課題に向き合える、そんな温かくも確実なチームをともに整えていきたいものですね。

 


ZERO ORIGINについて

ZERO ORIGINは、「自分らしく働く人を増やす」ことを目指し、キャリア支援と組織支援を行っています。
技術職としての現場経験と心理学の知見を活かし、キャリア、メンタルヘルス、組織づくりをテーマに、一人ひとりの声に耳を傾ける伴走型の支援を実践しています。

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