中山七里著
「テミスの剣」と対になる本作。出てくる渡瀬警部の存在が気持ちいい。
にしても、これは社会はミステリ、とかいうのでしょうか。死刑制度の是非を考えさせる深い内容になっている。現在の日本の法律では、死刑相当の犯罪を犯しながらも、無期懲役と生きながらえてしまうことに対する是非、犯罪被害者に対する世間の冷たさ、彼らの境遇と想い。義憤を意味する「ネメシス」をダイイング・メッセージのように残していく犯人の想い、など、現在の日本の死刑制度を考えさせながら物語は進んでいく。
結局、あっさりと犯人は捕まってしまうのだが、どんでん返しのプロはそんなことでは終わらなかった。途中まで、単なる社会派犯罪小説、と思いながら読み進めており、どんでん返しを考えると、犯人はあの人かな、この人かな、などと考えていた。が、それら全て裏切られたどんでん返し。やるなぁ。
日本の再犯率が高いのは、世間が暮らしにくい、刑務所の中のほうが暮らしやすい、などあるのかも知れないが、本当の、究極の刑罰とは何なのか、最後の最後まで読者に問いかける内容。重いと言えば重いのだが、普通に警察もののミステリーとしても楽しめる。あー、また中山七里にやられてしまったな。。。