楽観ロックのつぶやき

皆さんのおそばに一言添えたい。

(読了)蜩ノ記

葉室麟氏の著作。
時代小説といえば限られた作家の本しか読んでいなかっったが、こんな作品を書ける人がいるのか、と良い驚きを感じた。その時代の空気を感じることの出来る表現の仕方の中に、その時代の人達の武士としての矜持であったり、尊厳などを色濃く感じる。
 特にこの作品は、「死」を大前提にしたもので、切腹の日を決められた秋谷という一人の武士の生き様、矜持に加え、とある思惑から切腹を免れた庄三郎という若侍の心持ち、そして庄三郎は、秋谷の監視をさせられるという設定である。切腹の日が決まっている武士の家族の気持ちを慮るといたたまれないが、武家としての振る舞いはかつての日本にあった、人としての強さを感じる。武士の清廉さや、その家族の強さに惹かれていく若侍の心の動きがまたいい。
 最後、ハッピーエンドを期待したが、そんな甘いものではないし、それをあえて望まない秋谷の考え方など深く考えさせられる。
 この作品、直木賞を取ったとも知らなかったし、映画化されたとも知らなかった。勉強不足ですみません。やはり映画になったら、役所広司だよね。そうじゃなければ小林薫か。