図書館の返却期限に追われながら、テッド・チャンのSF短編集『息吹』を一通り読み切りました。
感想を一言でまとめるなら、「圧巻」というより「こういうアプローチもあるのか」です。短いお話と長いお話の差がずいぶん大きくて、途中でかなり戸惑いました。
冒頭は星新一っぽくて、よかったんです
トップバッターの『商人と錬金術師の門』は、面白く読めました。過去は変えられない、という前提の中で、どう行動するのか。示唆に富んだ、いいお話でした。短いなら、星新一のショートショートみたいな感じがいいなぁと思っていて、冒頭はまさにそんな感じでした。
そんな感じで進むのかと思ったら、次の表題作『息吹』で、いきなり「???」となりました。私はずっと、地球の人類が義体化している世界の話だと思い込んで読んでいたんです。それだと、何を言っているのかさっぱりわからない。
あとで読み返して、これは異星人の話なのだと気づいたら、ようやく腑に落ちました。前提がひとつ違うだけで、ここまで見え方が変わるのかと、驚きました。
中編が重い
「あとで読み返そう」と思って進んだら、次が中編の『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』で、これがまた重い。
ただのソフトウェアがロボットに入っていくあたりまでは、まだついていけました。それに愛情を持てるか、という主題なら、なるほどと思えます。ところが、さらに進んで「それとセックスをするのか」という話になったあたりから、なんだかなぁ、となりました。
読み進めるのがきつくて、返却期限もあるのに、ペースが落ちました。
とはいえ、今の生成AIは自分で学習もしますし、AIエージェントが意識を持っていると言われても、そこまで違和感はありません。何をもって意識があるとするのか、議論が白熱しそうです。そこは、現実が追いついてきた感じがしました。
ちなみにわたしは生成AI(CopilotやGemini、Claude)に名前をつけて、わざと感情移入?するようにしています。
リメンがあったら、自分は使うかなぁ
『偽りのない事実、偽りのない気持ち』には、過去のライフログを網膜ディスプレイに映せる「リメン」という仕組みが出てきます。
文字に書き残すのは、正確さには優れています。でも、話したときの雰囲気といった、ノンバーバルな情報は伝わりにくい。文字で正確に残せたとしても、正しいことと正確であることは違う。そんな主題も扱っていました。
文字を学んでいく若者の話と、リメンの話が交互に出てくる意味は、読んでいる間はよくわかりませんでした。あとで、記録技術の始まりと極致を並べているのかな、と思って、少し納得しました。
それにしても、自分が見たものを全部記録に残せるのは、ものすごいことです。でも、自分でそれをするかなぁ、と考えてしまいます。人と共有する機能も、使うかなぁ、と。
残りの短編は、駆け足で
『オムファロス』は、一神教の人には響くところがあるのかもしれません。八百万の神の国に生きる日本人としては、ちんぷんかんぷんでした。
最後の『不安は自由のめまい』は、別の世界にいる自分と話せる通信デバイスの話です。話すか、話さないか。そんな問いかけでした。
おわりに
最初は戸惑いが勝っていたのですが、『息吹』が異星人の話だとわかってから、この短編集の奥深さの受け取り方が、かなり変わりました。
短いお話は星新一みたいにサクッと読みたい派の私には、やっぱり骨のある一冊です。知らんけど。
