楽観ロックのつぶやき

皆さんのおそばに一言添えたい。

(読了)海の底

有川浩
会社の若い女子が有川浩が好き、と言っていたので、共通の話題欲しさに手を出した有川浩作品。「塩の街」と「空の中」と順序を追ってきてこの「海の底」である。いわゆる自衛隊三部作の三作目。ちょっと考えればわかります。「塩の街」が陸上自衛隊、「空の中」が航空自衛隊、そして本作が海上自衛隊というわけです。
 今三部作は続きものではないのでどれから読んでも問題はないもの。共通しているのは非日常的な設定が一つあって、それにまつわる人間の心を描いたもの、とでも言うのだろうか。
 本作の主な登場人物は、海自の幹部候補生でかつ問題児、性格は逆な夏木と冬原、そして警察側の明石警部と烏丸警視正。これまた問題児。で、他に高校生の女子と、厨二病真っ只中の中学生及び取り巻きとも取れる子どもたち。だれが主人公というわけでもなく、一人ひとりのバックグラウンドも書かれていたりするため、その辺は没入できるので面白いのだが、警察側だけはその辺が薄かったかな、もう少し明石警部の問題児ぶりがどこから来ているのかが想像できるようなことが書かれていると良かったかな。贅沢な要求。
 今回の非日常は人間サイズのザリガニみたいなのが大量発生して、上陸、人間を襲う、というものであった。他の作品もそうなんだけど、有川さんの作品は結構、スルッと人を死に至らしめる。今回も凄惨なシーンが描かれている。まぁ世の中綺麗事では済まないから、今回のような非日常的な出来事が起きればそりゃ人も死ぬでしょ、とは思うのだが、辛い。
 特に海自の二人の尊敬、敬愛する艦長についての記述は涙腺を刺激する。やっぱ艦長ってかっこいい。宇宙戦艦ヤマトの艦長もかっこいいが、潜水艦きりしおの艦長川邊艦長もかっこよかった。
 流れで潜水艦内に閉じ込めれた子どもたち15人と海自隊員二人のやり取りを通して、子どもたちの成長も感じられるし、子どもながらにいろんな悩みを持っていたり、いろんなことを考えてるんだよ、本当は、といった子育てにつながるところ、中三の跳ねっ返り小僧と、唯一高校生の女子がおとなになっていくあたりも無理がなく読める。跳ねっ返り坊主は最後はスッキリと和解か?と思ったが、厨二病はそう簡単には治らないものの、大人には近づいた。
 事件の対応の初動は警察なのだが、警察の限界から自衛隊に対応を移すための苦労や、自衛隊に対応が移っても武器の使用に付いての制限など、今の日本における法規制といったしがらみがたくさん記載があり、この辺はほらあの「シン・ゴジラ」みたいな感じよ、というと多少わかりやすいかもしれない。
 にしても、自衛隊について、綿密な取材の上描いていることもわかるし、社会問題、子どもの成長、モンスターペアレントなど、多様な問題を意図してか意図せずかはわからねども、端々に織り込まれているのは有川浩の特徴なのかもしれない。
 それを確かめるためには、図書館戦争に手を出さねばならないのだろうか(ニヤリ)